『生命観の探究―重層する危機のなかで』目次細目

はしがき

凡例

 

序説 新たな生命観が問われている……17

一、なぜ、生命観なのか…18/ 1生命の時代/2バイオポリティクス/3文化と倫理/

4方向が見えない/5いのちの尊厳の危機

二、地球環境問題…24/ 1世界自然憲章/2持続可能な開発/3様ざまな環境保護思想/

4叡智を分けあう

三、生命観の揺らぎ…29/ 1根本の傾向をさぐる/2細胞説から遺伝子説へ?/

3文化も遺伝する?/ 4生物の多様性とは?/5文化の多様性とは?/6種とは?  

/7自然循環論の意味/8地球規模で考える

四、ポスト冷戦…37/ 1イスラーム主義‐対‐資本主義/2向上もひとつの価値観/

五、生存の権利とは何か…41/ 1価値観を問いなおす/2「家」の思想/

3かけがえのない個人

六、人のいのちは地球より重いか?…45/ 1格言はどこからきたか?/

2なぜ、ご都合主義がまかりとおるのか

 

第一章 人権思想と進化論受容……50

一、日本国憲法十一条…51/ 1基本的人権を与えるのは誰か?/

2自然権の思想/3理神論/4リセプター

二、「生命」ということば…57/ 1性命と生命/2いのちと生命/3「生命」と”life

三、キリスト教と自然科学の受容…63/ 1キリスト教の受けとめ方/2ふたつの理学

四、自由と平等の受容…68/ 1天賦人権論/2福沢諭吉と西周の場合/3社会平権論/

4平等思想のリセプター

五、自由民権思想の展開…82/  1大井憲太郎と小野梓/2植木枝盛/

3加藤弘之-対‐馬場辰猪/4社会進化論の対立/5中江兆民の唯物論哲学

六、加藤弘之の転向…92/  1人権論から進化論へ/2国法汎論/3スペンサーの影/

4天則/5万邦無比の国体論/6家族国家論の展開

 

第二章 生物学の生命観―二〇世紀へ……106

一、生物学的生命観…107/ 1生物の属性/2ギリシア哲学/3細胞説/

4細胞説のゆらぎ/5ダーウィニズム/6ダーウィニズムへの反応

二、ダーウィニズムとスペンサー哲学…115/ 1最適者生存/

2ダーウィニズムと社会思想

三、ハクスリーの相互扶助論…120/ 1厳密な科学/2相互扶助論

四、創造説の根強さ…124/  1宗教から科学へ/2ダーウィンとキリスト教/

3ダーウィニズムの失墜/4科学から宗教へ?/

五、中国での進化論受容…130/  1天演論/2天と勝ちを争う

六、進化論受容の日本的特徴…133/ 1進化論の浸透/2人生論として/

3進化論受容のゆがみ/4社会観との相互浸透の問題/5国家観の生存闘争/

6原理把握の弱さ

七、機械論をめぐって…142/ 1生気論/2動物‐機械論/3カンギレムの見解/

4人間機械論

八、機械論--生気論の図式…147/ 1新生気論/2図式の転換/

3システム論は第三の道か

九、ヘッケルの生命一元論…152/  1エコロジーの考案/2万有生物論

一〇、生命一元論の哲学的基盤…156/  1カント/2ドイツ観念論/3生の哲学へ

一一、国家、社会と生命観…162/  1カンギレムの思いこみ/2国家と身体/

3社会と生物/4文化圏の盛衰

第三章 欧米の生命主義―二〇世紀前半……169

一、感覚、知覚、意識…170/  1感覚への注目/2意識の哲学/

3フランスにおける「感覚」

二、レーニン―唯物論の変容…174/  1マッハ批判/2唯物論のレーニン的段階

三、ベルクソン―生命の跳躍…177/  1突然変異説の応用/2断えざる生成/3反響

四、ドイツにおける「生の哲学」…181/  1生の全体性/2テクノクラートの思想/

3近代を超えるユートピア

五、ショーペンハウアー―生の苦悩…185/ 1厭世哲学の流行/2音楽/3無意識の哲学

六、トルストイの生命主義…190/ 1神は生命である/2生命の無限性と普遍性

七、生命の文芸…196/ 1アメリカ/2イギリス/3フランス語圏

八、自然主義からモダニズムへ…200/ 1ラスキン/2文芸における自然主義/

3象徴主義/4意識の流れ

九、前衛美術の生命観…/ 1絵画の冒険/2前衛美術/3生命の表現

一〇、生命主義の影…216/  1ロマンティシズムの呼びかえし/2日本への影響

 

第四章 前近代東アジアの生命観……219

一、自然崇拝…220/ 1その普遍性/2ギルガメシュ神話の教え/3スサノオ/

4スピリチュアリズムとアニミズム5天道思想

二、日本の古代神話…227/ 1神話と歴史/2編纂方法/3神仏習合

三、中国古代の思想…230/  1気と生/2陰陽五行/3性善説、性悪説/4道家思想

四、古代の仏教…236/  1転生からの解脱/2ヴェータンダ聖典群/3大乗仏教/

   4中国と日本のちがい/5即身成仏

五、永遠の生命…243/ 1不老長寿の願い/2死後の永生/3生まれかわり

六、中世の神道思想…248/ 1神道の自立/2様ざまな神道

七、中世の仏教思想…251/ 1無常観/2現世主義への傾き/3キリスト教の興隆

八、宋学ないし朱子学…255/ 1宇宙論/2理気二元論/3自己陶冶

九、陽明学および陽明学左派…261/ 1心即理/2知行合一/3陽明学派/

4李卓吾の思想/5性命の道

一〇、日本近世−現世主義の蔓延…266/ 1諸学の並立/2陽明学の影/3伊藤仁斎/

4人情を尊ぶ/5普遍主義/ 6朱王学の復興

一一、「元気」の拡散と変容…272/ 1貝原益軒『養生訓』/2日・中・韓の「元気」/

3原理離れ/4山水画の気の道/5北越雪譜/6「元気」の転換

一二、本居宣長―エロスの表現…263/ 1「和」の独自性/2もののあはれの説/

3伝統の発明

一三、平田篤胤の幽冥界…290/ 1幽明界への関心/2日本のパンテオン/3敵は仏教/

4死後の裁可/5歿後の篤胤

 

第五章 自然の「生命」、人間の「本能」……299

一、スピリチュアリスト、北村透谷…300/ 1国民の元気/2押川方義/

3スピリチュアリズム

二、リセプターとしての陽明学…307/ 1独歩の由来/2リセプターとしての陽明学

三、明治の陽明学…311/ 1内村鑑三/2天と我/3知識青年の煩悶と修養ブーム/

4修養の展開

四、藤村・蘆花・独歩―自然の「生命」…330/ 1科学的観察/2スケッチの意味/

3光景の変化を書く/4自然の生命/5自然との合一

五、岡倉天心―宇宙の「生命」…336/ 1東洋の理想/2芸術三段階論/

3東洋的ロマン主義

六、高山樗牛―本能満足主義…344/ 1人生の目的は幸福に/2美的生活を論ず/3波紋

七、性欲というテーマ…348/ 1ゾライズム/2旧主人

八、自然志向と宗教感情の高まり…353/ 1日露戦争後/2美しき天然/3宗教新時代

九、田園趣味のひろがり…360/  1田園都市構想/2貸家で解決/3「元気」の回復/

4三宅雪嶺『宇宙』/ 5幸田露伴『努力論』

 

第六章 生命主義哲学の誕生……373

一、西田幾多郎『善の研究』を読む…374/ 1純粋経験を唯一の実在として/

2初版への反応/3倉田百三の賞賛

二、lifeの研究者…378/ 1禅とテニス/2学問はlifeのためなり/

3人生、いかに生きるべきか

三、「我」の思想…385/  1独我論を超える/2東洋の我、西洋の我

四、愛と宗教…389/ 1浄土真宗/2真宗改革派/3宗教観の特徴/4真の自己を知る

五、宗教の本質…395/ 1真の自己として再生/2キリスト教神秘主義/

3東洋思想に立脚/4諸宗の根は同じ/5トルストイ

六、論理のしくみ…401/ 1意識/2循環論法/3/直覚

七、近代哲学を超える…405/ 1近代の不幸/2認識の出発点/

3近代‐対‐反近代の対立を超える

八、純粋経験…410/ 1純粋経験とは何か/2空/3統一性/4概念と真理

九、生命…415/ 1純粋経験の多様性/2生命の捕捉/3真生命/

4ヘーゲル論理学の換骨奪胎/5生物学/6整合性/7課題

 

第七章 大正生命主義の諸相……425

一、岩野泡鳴『神秘的半獣主義』…426/ 1メーテルランクの兄弟分/2刹那主義/

3泡鳴の批判の性格/4詩人、泡鳴/5恋愛論、国家論

三、人生観上の自然主義…433/ 1危険思想/2新自然主義へ/3片上天弦/

4夏目漱石『虞美人草』

四、島村抱月とその周辺…439/  1囚われたる文芸/2金子筑水/3純粋自然主義/

4生命主義の渦

五、木下尚江『懺悔』と白樺派…447/  1懺悔の流行/2バクテリアから人間まで/

3神聖なる生殖/ 4キリストやブッダを超える/5地球的本能/6自然派後の主観

六、上田敏と徳冨蘆花―生物の本能…454/ 1新道徳説/2ふたつの生命派/

3みゝずのたはごと/ 4生命主義のひろがり

七、押川方義と筧克彦―「宇宙の生命」への信仰…459/ 1諸派を超える宗教/

2大川周明訳『永遠の智慧』/3神道は世界の普遍思想/4日本民族一心同体の基礎  

/5「あらひとがみ」の観念/6伝統の組みかえ/7岩野泡鳴『古神道大義』

八、自然科学、文化主義、社会運動…468/ 1大正生命主義の多彩さ/

2二〇世紀初頭の自然科学/3人格主義と文化主義/4大杉栄と賀川豊彦/

5大本教の隆盛/ 6田辺元「文化の概念」

九、女性解放と自由恋愛の思想…477/ 1『青鞜』の創刊/2平塚らいてうと伊藤野枝/

3恋愛と結婚/ 4厨川白村『近代の恋愛観』/5日本の色恋/6恋愛思想のひろがり

 

第八章 大正生命主義の文芸とその周辺……488

一、にがい酸っぱい生の味…488/ 1日本象徴詩の出発/2煩悶とデカダンス/

3惨劇嗜好/4江戸懐古/ 5永井荷風「帰朝者の日記」/6近代的弊害への呪詛

二、北原白秋―叛逆と童心…498/ 1都会の憂愁/2谷崎潤一郎「刺青」/3文化批判/

4宗教的陶酔/5エロ・グロ、ファンタジー

三、牧水と夕暮―寂しい生命…509/ 1象徴論の導入/2若山牧水/3前田夕暮/

4生命の流動

四、斎藤茂吉―いのちの歌人…515/ 1いのちのあらはれ/2融合と乖離/3童馬慢語/

4短歌における写生の説/ 5太田水穂の批判

五、太田水穂―芭蕉再発見…522/ 1文芸批評家として/2歌論の展開/

3万有愛の思想/4芭蕉研究会/5それまでの芭蕉評価/6芭蕉評価の画期/

7生命主義歌論の展開

六、文壇の芭蕉ブーム…533/ 1芭蕉再評価のひろがり/2佐藤春夫「『風流』論」/

3心境小説/ 4萩原朔太郎「象徴の本質」

七、モダニズムへ…522/ 1『アララギ』/2釈迢空「歌の円寂するとき/3新感覚派/

   4「美の本質」と「檸檬」/5梶井基次郎―リアリスティック・シンボリズム/

   6前衛短歌の脈動/7生命の象徴表現/8その後の展開

八、与謝野晶子―踊る肉体…550/ 1自我の解放/2実感主義/3自我の正体/

4肉体の思想/5古い衣装/

九、宮沢賢治―小さな博物館…557/ 1汎生命のヴィジョン/2歌稿群/3春と修羅/

4ヘッケル受容/5童話世界/6自然征服観と生存闘争/7全体主義

 

第九章 生命主義の変容……567

一、志賀直哉―自我の空虚…568/ 1強い自我と弱い自我/2『和解』/3命のつながり  

  /4空虚を埋めるもの/5マルクス主義の台頭/

二、島崎藤村―家と血の幻想…576/ 1遺伝/2半封建的な家族制度/

3前近代の家族制度/4家の近代化/5家族の解体/6悪い血の物語/

7『新生』以降

三、建部遯吾と永井潜―民族優生学の思想…589/1人種・民族・国民/

2社会学から優生学へ/3永井潜『人性論』/4民族意識の転換/5国民優生法

四、文化相対主義から多文化主義へ…597/ 1文化相対主義/2文化相対主義の構図/

3多文化主義の季節/4対中国戦争の戦略転換/5皇民化政策/6アジアはひとつ

五、多文化主義から日本主義へ…609/ 1高群逸枝の遍歴/2恋愛創生/

3唯物論、唯心論の対立を超える/4和辻哲郎―「日本の使命」/

5タウトの天皇芸術論/ 6西田幾多郎『日本文化の問題』

七、皇国ファナティズムへ…616/ 1思想の分水嶺/2「日本精神」をめぐるせめぎあい/

3大乗的生命主義/4岡本かの子『仏教読本』/5滅私奉公の合唱へ

八、「大東亜共栄圏」の思想…629/ 1互助連携のタテマエ/2『世界史的立場と日本』/

3世界史的立場の破綻/4「近代の超克」座談会/5滅私奉公の哲学

 

第一〇章 第二次大戦後の生命観……641

一、戦後の再出発…642/ 1生きることが全部/2滅私奉公の裏がえし/

3「堕落論」再考/4自我の葛藤/ 5生命観/6天皇制論

二、出なおし史観…651/ 1近代化主義/2明治以来の天皇制イデオロギー/

3ダブル・スタンダード/4生命への畏敬/5様ざまな旅立ち

三、岡本太郎―民族の伝統…661/ 1岡本太郎と坂口安吾/2生命主義/

3国際前衛画家の出発/4縄文賛美の根方/5伝統の創造/6複合文化論

四、高見順―生命主義の末路…672/ 1生命賛歌/2生命からの疎隔/

3『この神のへど』/4『生命の樹』/ 5『いやな感じ』/6読まれそこないの傑作  

/7デカダンスの極み

五、丸山真男の転向…687/ 1古層という発想/2つぎつぎになりゆくいきほい/

3進化論受容をめぐって/4歴史意識の貧困/5歴史意識と生命観/6生命観の貧困

六、復活する生命主義…699/ 1戦後思想へのリアクション/2三島事件と大江健三郎/

  3石牟礼道子『苦海浄土』/4井伏鱒二『黒い雨』/

5大庭みな子―大きな生命の物語

八、生命というテーマ…709 1大きな生命の浮上/2癒しをめぐって/

3「私小説」伝統の評価を変える

 

第一一章 日本武道と神秘体験……717

一、武道の国際化…718/ 1武術から武道へ/2東洋の神秘への関心

二、柔道、その近代化…721/ 1柔術から柔道へ/2弓術の近代化

三、阿波研造の弓道思想…724/ 1宇宙と合一/2出発期/3禅と陽明学/

4宇宙との合一/ 5宗教新時代のなかで

四、武道のおける神秘体験…732/ 1植芝盛平/2阿波研造の神道思想/3神ながらの道/

4平和のための武道

五、戦前世代の生命観…738/ 1土着の自然法?/2自然の大生命という思想

 

第一二章 新しい生命観を求めて……743

一、人類生存の危機―モノーと野間宏…744/1西洋近代への告発/2野間宏の哲学/

  3漱石「現代日本の開化」/4なぜ、漱石だったか/5人間中心主義の検討/

6モノー『偶然と必然』/ 7野間宏の批判/8知の編成のちがい/

9総合化の道を問いなおす/ 10科学コンプレックス

二、自然保護と生態系の思想…762/ 1公害先進国、日本/2日本文化の問題として/

3生態系の思想/4エコロジー/5日本の環境保護思想/

6「自然との一体化」の功罪/7近代の超克史観/8環境保護の現在

三、生物学の現在…776/ 1分子生物学―変わる進化論/2サイバネティックス/

3情報理論/ 4遺伝的プログラム/5言語プログラム?/6特定集団のルール/

7動物行動学/8環世界/9現象学的世界

四、学の総合化…785/ 1有機体の哲学/2進化の頂点に立って/3システム理論/

   4一般システム論/5システム論の展開/6ニューサイエンス/7複雑系

五、解決に向けて…812/ 1人間生存の危機の拡大/2近現代史の編みかえ/

3生命主義の諸傾向/  4伝統思想との関係/5生命観の探究/6生物の合目的性/

7擬人化

六、解決のための原理…824/ 1人間の超越性/2生命観中心法/3原理主義の廃棄

inserted by FC2 system